既存の商品の品質を維持するための技術指導と、新商品の製造方法やノウハウを現場へ落とし込むことが主な私の仕事です。カステラをはじめ、お菓子を焼く機器は着実に進化しています。各工程はオートメーションにより管理され、機器の設定を調整すれば、誰でも一定の品質のお菓子をつくることが可能になりました。ただ、気温や湿度、原材料の状態、生地の浮き具合、色づき具合など、さまざまなポイントを我々職人が見定めることが重要です。機械まかせでは決していいお菓子はできません。そしてなによりも、楽しくつくる姿勢を大切にしています。カステラは真正面から向き合うと、きちんとそれに応えてくれます。そのため、技術だけでなく自分自身の心の持ちようがとても大事です。一緒に働く人を思いやる意識。率先して現場を整理整頓する意識。みんなと協力していく意識。お菓子づくりを楽しむ意識。そういった想いが商品につながっていき、最終的にはお客様に伝わります。これからも仲間たちと共に、昨日より今日、今日より明日、と切磋琢磨していき、いいお菓子をお客様にご提供したいと思っています。カステラは極めてシンプルな素材と配合でつくります。だからこそ奥深く、チャレンジしていける魅力があると思います。そしていつか長崎堂の“究極のカステラ”をつくりたいと考えています。今後は、カステラマスターとして後進の指導・育成にも、さらに力を入れていきたいですね。
私の仕事は新商品の開発と、商品の製造指導・品質管理が主な業務です。商品開発では、原価や作業効率、素材選定、市場動向、他部署の意見など、さまざまな視点・要素を鑑みて行います。ただし一番意識していることは“長崎堂らしい”商品であるか、という点です。現在、長崎堂・黒船・然花抄院と3ブランド展開していますが、それぞれの歴史やイメージ、お客様が求めるものに違いがあるため、ブランドを体現する商品でなければならないと考えています。製造指導についても、つくり方を伝えるだけでは不十分で、その商品のバックにあるストーリーや想いを伝えることが大切です。また国内だけでなく、海外向けの商品開発も増えています。現地向けの味や品質の細かな調整も行っていますが“長崎堂らしさ”は失わないようにしています。言葉や表現の違いがありますが、海外スタッフにもきちんとお菓子に込めた想いが伝わるよう努めています。長崎堂は2019年、100周年を迎えました。脈々と受け継がれるカステラづくりの技術・伝統を背負ってお菓子づくりをすることは、責任も感じますが、非常にやりがいを感じています。ただ、歴史ある会社でありながら、アットホームな雰囲気で、部署間はもちろん、社長との距離が近いのも長崎堂の魅力のひとつですね。お菓子は人を笑顔にする力をもっています。お客様に笑顔になっていただくと共に、つくり手も販売員も、関わる人すべてが笑顔になるお菓子を開発することが私の目標です。